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空き家だった(株)タムラの3Fで音楽スタジオ「ナイスビームスタジオ」を運営して3年が経ちました。場所柄でしょうか、このスタジオはかなり年齢層が高く、土日の昼間なんかはゴルフ場のレストランみたい。若いバンドと違ってのんびりしたもので、休憩時間には缶ビールを飲みながら音楽談議に花が咲き、たまには練習より休憩時間の方が長かったりしてね。
しかし、侮るなかれ、この50〜60歳代の“リアル”ビートルズ世代。音楽への愛は深く、そして熱い。みんな本当に楽しそうにバンドをやっている。ギターと缶ビールを両手に。本当に楽しそうに。さすが20世紀ロック少年。―――ところで最近、我が溺愛する2歳の息子が、いつも楽しそうに歌うようになった。特に教えるわけでもないのにずっと何か歌っている。トミカとお菓子を両手に。本当に楽しそうに。・・・・同じだ!!愛だ!「All You Need Is Love」愛こそすべて。ジョン・レノンの言う通りだ。
僕が生まれた1962年にビートルズがデビューして、ちょうどロックを聴き始めた中学の頃は、レッド・ツェッペリンやら、クイーンやら、キッスやら、ハードロックの成熟期で、なかなかの洋楽ブームでした。
ただ、あの頃は情報の少なかった時代で、ラジオは唯一の情報源だった。ロック評論家渋谷陽一の「ミュージックストリート」を毎週かじりつくように聴いていました。あとは、たま〜に思い出したようにTV放送された「ヤングミュージックショー」。当時では見る術も無かった憧れのバンドのライブ映像を1時間も放映するという、NHKの太っ腹な番組だった。ビデオも無いから瞬きもしない覚悟で懸命に脳裏に焼き付ける。イエスを見た時はひたすら感動したなあ。
そんな音楽を聴く機会が圧倒的に少ない環境の中、なんと幸運にも、僕の家の洋間には、(ジャジャーン)、オールドスタイルな箱型のステレオがあったのです。しかし、あまり使われてもいなかったそのステレオの中にあるレコードと言えば、親父の趣味の裕次郎やら、五木ひろしやら、湯の町エレジー?、そしてマカロニ・ウエスタン(涙)。せめてベンチャーズぐらいは買っとこうよ。

tamura-2レンタルも無い時代、中学生の僕らにレコードなんかそう買えないので、とりあえずみんなでロック雑誌のアルバムジャケットを眺めて空想しながら、ひたすらお年玉や小遣いを貯める。今思えば、情報が貧しかった分、ロックバンドは神秘的な存在だった。そして、喉の渇きがある分、僕ら20世紀ロック少年の心は豊かだったかもしれない。
はじめて買ったレコードは、エアロスミスの「ロックス」。最初にレコードに針を落とす時のドキドキは今でも忘れない。毎日毎日、バカみたいに同じアルバムを聴いていましたね。あのころ、大音量でロックを聴いていると部屋の空気の色が変わるような不思議な感覚があった。そう、多感な思春期に味わう毎夜のエクスタシーのひと時。例のごとく、大音量でディープ・パープルの「イン・ロック」を聴いていると、―――バタンとドアが開いて、はげしい金切り声がその陶酔の空間を引き裂いて、僕は飛び上がる。
「あんた、いつまで聞きようとね!やかましかっ!!」
う〜ん、今の母ちゃんのシャウトは、イアン・ギランよりすごかったねえ。