いよいよ母国でのオリンピック開催があと2年後に迫ってきました。
 最近の若いアスリートたちの活躍ぶりは凄まじくメダルの期待も含めて非常に待ち遠しいものですね。それに伴い、各地で進む建設ラッシュや選手村で必要な1500万食の食材など、その経済効果は30兆円とも言われています。残念ながら、競技には参加できませんが(笑)、企業人として何らかの形で参加できないかと考えています。そこには製品やサービスの質だけではなく参入するにはオリンピックならではの厳しい条件が課せられています。
 弊社は農業に携わっていますので今回食品の話をしますが、極端でもなんでもない話で、オリンピック選手が開催国の食材を使った料理を食べられない…、日本食が世界で非常にブームになってきているのに国産の食材をアピールすることができない、そんな笑えない事態が広がっているのです。
 例えば、選手村の食材について、農業生産工程管理(GAP又はそれに相当するようなもの)という認証を取得した農家の産品しか認められていません。それなのにその取得者が1%しかいません。人数でいうと約4000人程度です。とてもじゃないですが、供給することは不可能です。ちなみにロンドン五輪では、2年前にはGAPに相当する基準を満たすものを8割の農家が取得していたそうです。
 そもそもGAPとは何か?簡単に言うと農業版ISOみたいなもので、生産者が栽培から出荷までの期間、環境を保全しながら安全な食材を消費者に届けることを目的にしたルールです。こんな当たり前のルールが何故浸透していないのでしょうか?、海外に比べて非常に出遅れているのでしょうか?日本には善かれ悪かれ農協という組織がある程度は管理しています。何よりその国民性と生産者と消費者間のこれまでの慣習で日本のものは大丈夫だろう的な発想です。
 最近は、輸入品も増え産地偽造や賞味期限切など食の安全を脅かす問題がクローズアップされるようになってきて基準もだいぶ見直されてきています。しかしながら、大部分の消費を国内で行う我が国では、日本の基準が法律で済んでいたのです。語弊はありますが、ある程度のものを作っておけば生活が保障されるという国の農業保護政策のひずみがこのようなところにもでてきています。ヨーロッパ(EU連合)など農産物の輸出が大部分を占める国々では世界共通の安全基準を満たしていないと輸出そのものができませんので必然性があったのです。
 では、その目的達成のために200項目ほどのチェックと記録を残しておく、しかも第三者である認定機関に依頼しなければなりません。その費用もばかにならず取得するために数十万円、維持していくのに年間10万~40万ぐらいの費用がかかるといわれています。我が国でも慌てて補助金などの手を打っていますがなかなか広がっていかないというのが現状です。
 このようにGAPの取得にはかなりの時間とコストを要しますが、世界に打って出るにはどうしても必要になってくるのは間違いありません。国も現在の7000億ほどの輸出を1兆円にすることを目標にしています。 皆さんはどのようにお考えになりますか。